ユニクロの服は、質が良くてオシャレ。いつからそんなふうに言われるようになったんだろう。「ユニバレ」なんて言葉が使われていた時代もあったが、今では「それユニクロ? いいよね」くらいの感じになっている。時代の価値観は変わるもんだ。もちろん、ユニクロの企業努力とブランディングによるものが大きいんだろうけど。
実際に俺も、ここ半年で、洋服をユニクロしか買わないようにしてみた。それまでは、国内外のブランドものを買うような男だった。ファッションは、わりと好きなほうであると思う。
すると、ある変化が訪れたことに気づく。そしてこれは、確実にファッションセンスを向上させるものだとわかった。
ユニクロの服の品質(実際のところ)
ユニクロの品質がすごい、コスパやばい、他のブランドだと数万円してもおかしくない。そんなこと、誰がどんな価値基準で判断していいものか…疑問に思う人もいるだろう。私見では、ユニクロの服の品質とコスパが高いのは事実だと思う。
理由は、その生産量と販売数にある。1着売ると3万円の利益が出る10万円の服を100着売るのと、1着売ると1000円の利益が出る5000円の服を5000着売るのとでは、後者のほうが儲かる。これは、国内のブランドとユニクロの比較をしてみたつもりだが、実情に近いのではないだろうか。
ユニクロの店舗数は、公表されているデータによると、国内外で2300店舗を超える。このなかには都心の単独大型店や、百貨店・ショッピングモールの大型施設内の店舗も含まれる。そのなかで1つの型の製品が、1店舗で2~3着売れれば、5000着なんてすぐに達成できる。
製造にかかるコストも、作る数が多ければ多いほど圧縮できる。規模の経済が働くわけだ。さらにユニクロは、SPA(製造小売)として製造・流通・販売の全過程を一気通貫で行える。これもコストを下げることができるシステムだ。
ユニクロは創業から時間をかけて、現在では強靭な基盤をほぼ完成させたと考えてよいだろう。製造のノウハウや取引先との関係づくりも、並行して行われているはず。その恩恵が、ここ数年でユニクロで販売される商品の品質に反映されている、と考えるのが、現状への好意的な見方であろう。
業績の好調ぶりを見るに、この流れはまだ続くだろう。よりよい商品が引き続き、他の追随を許さないコスパで供給されるはずだ。
しかし、国際的な原料高により、値上げを余儀なくされているのが最新のステータスだ。ここで、値上げを行わなずにステークホルダーへの利益配分を維持することができたら、超優良企業の評価を得られたのだろうが……実情としては、どこかが涙を飲んだ末に成り立っていた品質と価格だったのだろう。
高い服を買うのをやめ「全身ユニクロ」にして訪れた変化
さて、堅苦しい話になってしまったが、ここからは実際にユニクロの服しか買わない生活を始めて気づいたことを2点、書いていこう。
1点目は、失敗を恐れなくなったこと。
これまでは、洋服を1着買う際に、長い時間吟味していた。
「これ、今持っている服と合うのかな」「サイズは、ジャストじゃないほうがいいかも」「来年には着られなくなるデザインじゃないか」「着られるシーズン短いよな」
そんなことに頭を悩ませていた。そして、買ったはいいが、1着数万円の服を買うごとに、罪悪感が伴うこともあった。そして「着なきゃ」という強迫観念めいたものに襲われる。
失敗や後悔をなくすために吟味をするわけだけど、そこに費やすエネルギーはすごかった。もちろん、それだけ吟味すれば大体成功して、洋服を着る喜びはすごかったんだけど。
ユニクロで買うにあたっては、吟味はするけれど、価格のこともあってか、深く吟味する必要に駆られなくなった。「着なきゃ」という気持ちも小さくなった。だって、失敗した場合のコスト(おカネ)が小さいから。精神衛生上、これは非常にいい。
作っている人たちや製造にあたって発生する環境への影響に対しては「すみません」と思いつつ……。