全身ユニクロにするメリットの2点目は、センスのものさしを鍛えられること。
1つ目の「失敗を恐れなくなったこと」により、失敗が “できる” 状況が生まれる。
成功・失敗の判断の尺度も、「高いから」「トレンドだから」という価値基準を排除した観点で設けられる。純粋に付加価値を排除した洋服として、評価ができるのだ。
するとどうだろう、自分に似合わないもの、コーディネートになじまないもの、どう考えてもイケてるもの、それがわかるようになる。
たとえば白いシャツ。
Mサイズで買ったのだが、日々着ていて「もう少し小さいほうがいいな」と思いSサイズを購入する。しっくりくるわけだ。さらに「もう少し襟が小さくて、身頃もすっきりしてるといいな」と感じてスリムフィットのシャツを買う。ここまで着たら自分の体型を理解して、コーディネートになじむ、似合うシャツを着こなせていることになる。
ユニクロのシャツ1枚3000円(2990円)として、2回失敗して、結局3枚買って完璧なシャツと出合うとして、9000円だ。わりと極端に買い物が下手な人の買い方だけど、これで1万円以下。俺の場合、これまで1枚のシャツを買うのに最低でも2万円はかけていたので、半額で似合うシャツを買え、そして自分に何が似合うかを知ることができる。
「このシャツは、素材はいいけどシルエットがちょっとね。俺はサイズを1つ落として着てる。ジャケットを着るときは、ラペルとの兼ね合いも考えて襟が小さめのスリムフィットにしてるね」
もはや、ファッション上級者である。これに対して、これまでの俺は……
「このシャツ、パリのデザイナーの〇〇の服でさ。ブランドの昔のデザインを今風に解釈してるんだって。変わってるでしょ。パタンナーが、実はあのブランドでもやっている人なんだよね。シルエットきれいだよね」
マジでこんな感じだ。オシャレというよりブランド志向で、自慢が大好きで、非常にイヤなやつである。
買い物の考え方が変わる→価値基準が変わる
というわけだ。洋服好きの端くれとして「全身ユニクロ」を実践して見た結果と分析を書いてみた。
改めてになるけど、ユニクロの品質は心配しなくていい。先に書いた通り、価格に対して品質が異常に高い “いいもの” であることは間違いない。
ユニクロがダサいかについても、ダサくないから心配しなくていい。なんでダサくないかというと、自分に似合う服が何かを、ある程度は追及できるから。それを実現しているのは、低価格と、型数の多さだろう。
型数の多さについてひとつ補足しとくと、サイズのバリエーションや型数を多く用意すると、メーカー・ブランドは、在庫のリスクを高めることになる。ユニクロくらいの資本があれば、似たような白いシャツでも、襟のかたちはもちろん、パターンの違い、生地の違い、それぞれをラインナップして低価格・高品質で用意ができる(ここはどえらい企業努力なんだろうけど)。
※相場観としてシャツ専業SPAのK社のシャツは6000~7000円、スーツ専業のS社のシャツは5000~6000円程度だ。ユニクロはこれに対し2990円…(値上げされるらしいけど)
それに加えて、最近マルニとかJWアンダーソンとかジルサンダーとかマメとか、定評がありつつモード感もほどよいファッションブランドとバンバンコラボしてる。名前を借りているだけでなく、しっかりとブランドらしさをユニクロの服をベースに発揮してもらっている入り込み具合もすごい。ブランド好き、モード好きも唸らざるをえない。
ユニクロは安くていいとか、そういう次元ではない。人々が洋服にかける費用の金額の相場を、常識を、品質と型数を充実させることで、ガクッと下げたのがユニクロだ。バカみたいに当然のことを書くが、お金をそこまで気にせず、ファッションを楽しめるようになったのだ。
正直、高い服を買うのをやめてユニクロしか買わなくなったら、ファッションを前より楽しめてる気がするし、ブランド一辺倒だったころより人格もまともになったし、わざわざ百貨店にいかなくても近くのユニクロでわくわくできるようになったし、家計の負担も軽くなったし、なぜだかモテるようになったし、いいことづくめだったわ。
俺の場合、飽き性だから、ユニクロブームが自分のなかでいつまで続くかわからんけど……ファッション好きでも、一度は通っておくことをおすすめするぜ、ユニクロを。