HARROGATE(ハロゲイト)「SHOREDITCH」 価格を無視した革質と完成度。でもやっぱ痛ぇ!|男の新定番ローファー探訪 第5回

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HARROGATE「SHOREDITCH」の革質は?

まず、HARROGATEというブランドの製品全般で採用されているらしい革について、俺の考えを述べる。

HARROGATE(ハロゲイト)「SHOREDITCH」 価格を無視した革質とデザインの完成度|男の新定番ローファー探訪 第5回 05
※ある程度履き込んだ状態です。靴クリーム塗布済

基本的に、革質は高いと思う。ブランドとしても、それを売りにしているようで「フレンチカーフ」という素材にこだわりを持っているようだ。

フレンチカーフとは、検索で調べみたところ、フランス産の上質なカーフスキン(仔牛の革)のことを指し、適度なハリと美しい陰影が特徴、らしい。

フランス産のレザーといえば、デュプイとかアノネイとかのタンナー(動物の皮を鞣して鞣し革にする製革業者)みたいな、高級ブランド御用達の印象があり、品質が高いイメージがある。HARROGATEでは、このタンナーがどこなのか明かすことまではしていないようだが、フランス産のレザーを使用しているということで革質をアピールしているようだ。

タンナーなんてたくさんあるんだろうし、素人が言われてわかるような名前なんてひと握りで、一般に名前を知られていない本当にいいタンナーとお仕事をしているんだろうと思います。肩書き能書きにしびれず、自分の目で見て、足で履いて、気に入るかどうか見極めてみましょう。

じゃあ、俺がどこを見て「革質が良い」と感じたか? 俺の場合は、肌理が細かいけどビニールぽくない、しっとりとなめらかな仕上がり。そして、革靴の形状を美しく見せる硬さと弾力。これらの点で高評価とした。

たとえばお安い本革のビジネスシューズの場合、履きやすくて疲れにくいけど、革がふにゃふにゃぺこぺこして妙にテカテカしてたりする。弾力もなくて履き皺がすぐについてしまったり。極端な例だけど。

いっぽうHARROGATEは、革靴の見た目を決定づけるうえでの要素は、ばっちり押さえている。つまり、かっこいい革靴をつくっている。

「SHOREDITCH」のデザインはどう?

SHOREDITCHは、これまで紹介してきたローファーのなかでは、もっとも無骨な見た目かな。そこに惹かれた。シュッとしていないわけじゃないんだけど、どっしりとした重厚感も備えている。かといって、大足には見えないコンパクトなシルエット。

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個人的にはオールデンのローファーより無骨な気がする。まぁ、オールデンはあのコバの張り出しのインパクトがあるからね。コバはあそこまで張り出してないです。ウエストンくらいかな。

なので、カジュアルにも対応する。というかカジュアル寄りかな? スーツに合わせるというよりは、アメトラみたいなジャケットスタイルに合いそう。

モカ縫い部分はオールデンぽい。ウエストンみたいな「拝みモカ」ではない、つまんで縫いあげているような感じ。以前、拝みモカのほうが好きとか書いてたけど、このSHOREDITCHを見て、心変わりしたんだわ……。そんくらい、デザインのバランスはいいと思う。

ソールはダイナイトソール。ゴム底のなかでは返りの良さを意識してつくられたもので、ポイントは高い。あと、英国の紳士靴のゴム底って感じだよね、ダイナイトは。そのなかでも、ソールの凹凸の出方がちょっと強い種類なのかな? ソールの表面に対してスパイク?部分が出っ張っていて、ほんのわずかに厚底効果が出ている気もする。

そう、ソールは薄くはないんだよね。どちらかというと厚めだけど、厚底の部類には入らない。なので、けっこうソールの重さを感じる。それもあいまっての無骨さかな。

ほんと、デザインがかなり良いローファーだと思います。それどこの?って革靴好きに聞かれそうな感じ。

「SHOREDITCH」のサイズ感は?

次に、SHOREDITCHのサイズ感。サイズ展開は、HARROGATEのオンラインショップを見るにUK6~9という展開で、ハーフサイズ刻みになっている。日本規格でいうと、24~27.5cmの展開。

この数字から、海外の人に比べて足のサイズが小さな日本人をターゲットに入れているのがわかる。既製靴メーカーの革靴で24cmの用意がたまにないこともあるからね。ただ、上限は本当にUK9(27.0cm~27.5cm)なのかな? だとしたら、ちょっと履く人をだいぶ絞っている気もする。

で、俺はUK6(24cm~24.5cm)のサイズを買いました。これが幸いぴったりだったのでよかった。むしろ、この価格帯のローファーで適切なサイズに出合えたというのが、購入の決め手だったかもしれない。

この価格帯でワイズ(横幅)がフィットしたローファーはほとんどなかったからね。長さはぴったりでも、横がカパカパなんてことがよくあった。SHOREDITCHはDワイズよりほんの少~しだけ細いかな? ウェストンのCワイズでぎちぎちでDワイズだとあとちょこっとだけ細くしてほしい、そんな俺にぴったりでした。

「SHOREDITCH」の履き心地は?

はい。写真を見てお察しかもしれませんが、履き心地は正直、改善の余地ありでした……。紐靴じゃない革靴の既製靴、つまりローファーを足にフィットさせるのは、至難の業だってことはわかっていたんだけど、ここまで辛いとは。踵から血が出た。

靴は足にフィットしている。それは間違いない。しかし、SHOREDITCHの革は硬い。そして、ソールにゴム底のなかでは比較的しなやかなダイナイトソールを使ってはいるものの、返りは良くない。

つまり、歩く際の足の反りについてこないため、踵にひっかけるかたちになり、なまじフィットしているため、思い切りそこに摩擦の力がかかる。踵の皮が剥ける。歩くたびにまたそこに負担がかかり、ついには出血をする。これがローファーにつきものの修行なのか……だったら今すぐにやめたいぜ。歩いて5分で家に引き返しそうになった。

ローファー全般に言えることかもしれないが、履き始め2週間の履き心地は地獄だった。辛すぎて、帰宅し三和土でローファーを脱いだら即座に玄関の扉へ向けて投げつけたくなったが、そんなことをしても詮無いので、ゆっくりと時間をかけて泣きながら足に馴染ませることにした。

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不細工だけど背に腹は代えられない

とはいえ、何の策も講じないとローファーが血だらけになるので、厚めの靴下を履き、ヒールグリップを買って踵の摩擦を軽減することにした。すると今度は、つま先がきつくなり足の指が痛くなる。もともとジャストフィットなので、タイトにする方向の調整は正解とは言えない。HARROGATEの革は硬いので、足の指をぎゅっぎゅっと押していじめてくる。

そんなこんなでSHOREDITCHを今まで履き続けて1年、回数にして50回ほどだろうか、まともに歩けるようにはなってきた。グッドイヤーウェルト製法だから、コルクが沈み込んで履くほど足の形に馴染むってのも関係してるんだろう。

しかし、よく歩く日には履かないことにしている。ましてや、走ることが予想されるような日には履かない。ローファーを履きたいときに少し気合いを入れて履く、という感じだ。

HARROGATEの製品は、日本人向けにラストを調整してくれているようで「反りのあるローリング設計の木型は長時間履いても疲れにくく、足馴染み抜群の仕上がりが特徴」らしい。それは非常にありがたい。たしかに、試着した際のフィット感と歩きやすさは申し分なかった。これまで紹介してきた高級なローファーに引けをとらないフィット感だった。

非常にありがたいとは思っているのだが、個人的には、ソールの返りをもう少しだけ良くしてもらって、革をもう少しだけやわらかくしてもらえるとうれしい。ParabootsのAdonisのGalaxy Soleみたいな返りの良いゴム底で、三陽山長の弥伍郎みたいなやわらかくも高級感のある革だと良いんだけど……まぁ、弥伍郎の革だとここまで無骨な感じは出ないか。むずかしいんだろうね、靴づくりって。

靴擦れはローファーの宿命なのかもしれないが、もうちょっとだけ、やさしくしてはくれないだろうか。とにかくここで伝えたいのは、ローファーは、試着でフィットして歩きやすくても、ちょっと長い間歩くと靴擦れが起きる可能性があるってこと。それを覚悟して購入することだ。地獄の修行を経ると最高の相棒になるらしいが、俺のローファーはまだそれには至らない、友達の弟くらいの距離感がある。

ハロゲイトのローファー「SHOREDITCH」の個人的評価

はい、ここまで「HARROGATE(ハロゲイト)」の「SHOREDITCH(ショアディッチ)」というローファーを紹介してきました。

ここで、俺が探しているローファーの基準について、あらためておさらいしよう。

  • 黒の表革
  • オーセンティックなデザインのペニーローファー
  • ノーズが長くない比較的カジュアルなデザイン(ビジネスにもいける)
  • ゴム底

まぁ、古き良きペニーローファーで、とんがってなくて、ゴム底で雨の日も気にせず履ける靴を探しているわけです。で、これまでいくつかローファーを紹介してきたけど、結局今回紹介したSHOREDITCHを買ったんだよね。

条件を満たしているのはもちろんなんだけど、やっぱり4万円以下という安さが購入を後押ししてくれたのは否定できない。試着時のフィット感も高級ローファーと遜色なく、デザインはこれまで試したローファーのなかでも一番気に入っている。

つまり、個人的評価は満点に近い。みなさんにもおすすめしたい。だから、後悔はしていない。

後悔はしていないが、靴擦れのダメージは半端じゃなかった。ローファーって、全般的にこうなの……? ローファーを普段履きしたことがないローファー童貞だった俺はまさしく洗礼を受けたよ。

自分のローファー観の軸になる一足を手に入れたので、今度は別のローファーを購入したいと考えている。たぶん、三陽山長の弥伍郎か、ParabootsのAdonisだな。この2足は、SHOREDITCHとは違う履きやすさへのアプローチをしているから、ぜひ所有して履いて試したい。

さて、結局ローファーを購入することができた俺だけど、もう少しだけ、ローファー探しの旅は続けたいと考えています。革靴つくってるメーカーさんはいっぱいあるからね。次の更新はいつになるかわからないけど、どうぞお楽しみに!!

第1回 三陽山長「弥伍郎」の記事はこちら
第2回 J. M. WESTON「#180」の記事はこちら
第3回 Paraboot「Adonis」の記事はこちら
第4回 ALDEN「99267」記事はこちら