三陽山長「弥伍郎」はコインローファーの模範|男の新定番ローファー探訪 第1回

ローファーって靴紐がないしリラックスした印象でビジネスでも(ちょっとくだけた感じになるけど)カジュアルでも使えるし、一足は欲しいよな。というわけでローファーを探し始めた。条件は、表革でゴム底。デザインはコインローファーでカラーは黒。いたってふつうのクラシカルなやつ。もちろん、気軽に履きたいのでサイズ感、履き心地は大前提。これから、数回に分けてローファーの試し履きレポートをまとめていく。

三陽山長「弥伍郎」はコインローファーの模範|男の新定番ローファー探訪 第1回 01

第1回は、三陽山長の「弥伍郎」。結論、これはもっとも優れたローファーのひとつである。

第2回 J. M WESTON「#180」の記事はこちら
第3回 Paraboot「Adonis」の記事はこちら
第4回 ALDEN「99267」の記事はこちら
第5回 HARROGATE「SHOREDITCH」の記事はこちら

三陽山長「弥伍郎」のサイズ感・フィット

結論、三陽山長の「弥伍郎」は既製のローファーの中では一番履きやすい靴だと思った。

やっぱり日本のメーカーで日本人のためにつくられたってことで、既製の革靴としては、随一の履きやすさだと思うよ。

三陽山長のブランドロゴ

あくまで、既製の革靴はってことで、この個人的見解についてはご容赦いただきたい。

ブランドサイトによると

定番ラストR2010をベースに開発されたR2013を採用したローファー【弥伍郎】 よりヒールカップを小ぶりに甲を低く抑えている為、スリッポンでありながらしっかりしたホールド感を味わえます。

弥伍郎 ブラック:COLLECTION|三陽山長(※現在リンク切れ)

とのこと。
(追記)だったんだけど、最近ラストが改良されたみたい! 最新の紹介文によると

2023年秋冬シーズンより木型を変更してリニューアル。
使用している木型はボリュームラストR2021をベースに、スリッポン用に改良したR2021Sを採用。
R2021Sを採用したことで、従来の弥伍郎に比べ、よりすっきりと上品な印象になりました。
また、スリッポン特有の踵抜け、履き口の緩さをスリッポン用に修正しているラストは、脱ぎ履きのしやすさ、レースアップシューズのようなホールド感を両立しています。

【弥伍郎/YAGORO】ローファー

進化してるんだなぁ……。ということですみません、以降の内容はリニューアル前の木型の弥伍郎を履いた際のレビューです。

ワイズはDくらいなのか、それほど窮屈ではない。一方で、締まるところが締まってる。俺はEワイズになると横幅が大きくてもう合わないんだよね。紐がない靴ならなおさらで。

弥伍郎は土踏まずのあたりっていうか、シュッとシェイプしてる。で、店員さんが言うには、ここをしっかり釣り込んでいる?から、長い間履いてもその箇所の革が伸びにくく、フィット感が持続するらしいのよ。だから、長く履くのであれば、履き心地が維持されるから、コスパいいと思うんですけどってお話をされた。

最初からフィットするように感じるローファーでも、長いこと履いてるとゆるんでくるもんらしい。まぁそうだよな、靴ひもがないから、なおさらだよな。いいローファーは、そこんとこもケアできてるらしい。弥伍郎は、この土踏まずの部分?が厚くなっていてクッション性すら感じる。しかも、滑りにくいように表面を処理してある素材を充てている。

で、ヒールカップ問題ね。ローファーはサイズを見誤ると、ヒールカップに踵(かかと)がおさまらず、スポスポ抜けてまともに歩けない。だから小さめで合わせてギチギチの状態から慣らしていくもんだって説がある。

三陽山長の「弥伍郎」は、ギチギチで合わせなくても大丈夫。かなり踵がすっぽり収まった。しっかりアーチ?アール?がかかっている。しかも、カーブが美しいんだよね……。

踵とアッパー部分で靴の重みって支えられるものだと思うんだけど、ローファーは履き口が広い分アッパーの面積が比較的小さい。そのうえ、紐もないわけだから。だから、踵とアッパーの2点で支えている感が強いんだけど、弥伍郎はそのバランスが優れているうえに、土踏まずの箇所を横から押さえてくれているから、かなり歩きやすい。

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ゴム底で汎用性も抜群。横からの見た目も◎

革靴はやっぱり革底一択でしょう、という哲学もある。通気性やソールの返りが革底のほうが優れているので、という考え方からか。でもね、やっぱり革底は滑る。俺は2足くらい革底の靴を持ってるけど、電車で踏ん張ると滑るし、アスファルトですら滑って転んだことがある。しかも、雨の日は相当傷むので履けない。だからだんだん履かなくなったし、ゴム底を貼ってもらったりする始末。

だから断然俺はゴム底はなんだけど、意外とインポートものとかだと用意がなかったりする。その点、三陽山長の「弥伍郎」はゴム底の用意もある。今は逆に、ゴム底しか売ってないのかな?

革靴のソールは、先述した通り、返りを考慮する必要がある。歩きやすさが変わってくる。薄いとそのぶん曲がりやすいから歩きやすいと思いきや、クッション性が足りなくなるから歩いていて痛かったりする。厚いとクッション性は担保されるんだけど、マジで靴が返らない(反らない)。圧底の革靴も持ってるけど、1日履いてられないんだよね。足がずっとまっすぐのままで、リラックスできない。

で、弥伍郎はそのへんしっかりしてて、薄すぎず厚すぎずのちょうどいい塩梅。オーソドックスな革靴だから、そのへんはしっかり押さえている。そして、ヒール部分をソール全体に比べて高めに設定しているらしくて、脚長効果や靴の存在感も担保されている。このバランスが、マジでありがたい。リッジウェイとか、コマンドとかで底厚をかせぐのもテクニック感あるけど、三陽山長の弥伍郎は、シンプルにヒールを高くしているっていうところが好感を持てる。しかも過剰じゃないってのがいい。

で、横からのソールの見た目ね。誰がてめえの靴を横から見るんだよと思うかもしれないけど、履く側のモチベーションに関わってくるからな。ゴム底だと、横から見るとアッパーの革との質感との違いがモロに出て、けっこう安っぽく見えたりする。実は、これからのレポートでも紹介するけど、ここでちょっとな~と思ったローファーもあった。

弥伍郎は、その点なんの問題もない。ゴムだとわからないくらい?とは言わないが、上品な感じである。もちろん、ゴム底感を出したいとか、ゴツゴツしたソールをアピールするカジュアルなスタイルもあると思うから、一様に否定することはしないけど、今回の俺の希望はちょっとカジュアルなビジネススタイルでも履けるってことだから、上記の観点で評価させてもらう。

次のページでは、アッパーやフォルムのレビュー。そして、結局俺はこの靴を買わなかったんだけど……その理由をお話します。

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