ローファー特集の第3回。この特集で紹介しているローファーにはちょっとした縛りがありまして。ペニーローファー(コインローファー)であり、色は黒、表側でゴム底(ラバーソール)、ノーズが長かったりしないクラシカルなデザイン。このへんを満たすローファー。そしてなにより履き心地。試し履きを重ねて感じたことを、皆様にも共有できればと思って書いています。
第3回は、Paraboot(パラブーツ)のローファー「Adonis(アドニス)」。パラブーツのイメージとはちょっと違う端正な仕上がりと、やっぱりパラブーツらしいタフな側面、どっちも感じられる、かなりシブいモデルだと思う。
第1回 三陽山長「弥伍郎」の記事はこちら
第2回 J. M. WESTON「#180」の記事はこちら
第4回 ALDEN「99267」の記事はこちら
第5回 HARROGATE「SHOREDITCH」の記事はこちら
Paraboot(パラブーツ)といえばUチップ?
Paraboot(パラブーツ)はフランスのシューメーカー。公式サイトにその歴史の説明がしっかりと書かれていて、1908年からスタートしてるから、100年以上の歴史があるみたい。
パラブーツといえば、タフなラバーソールのイメージがある。公式サイトでは、パラブーツはゴム底靴のパイオニアではないけれど、と謙虚な書き方をしていて好感が持てる。パイオニアではないけれど、より洗練された方法でシューズにゴム底を定着させる方法を考えついたと。そしてそれをブランドの「DNA」として現代まで大切に育んできたそうな。
代表的なモデルはなんだろう。チロリアンシューズの定番となる「MICHAEL(ミカエル)」のヒットで窮地を乗り越えブランドの地位を確立したそうだが、日本ではやっぱり、Uチップの「CHAMBORD(シャンボード)」が人気なんじゃないかな?
カジュアルに使えるUチップの代表格で、同じくフランスの名門「J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)」のUチップシューズ「GOLF(ゴルフ)」と双璧をなすモデルなんじゃなかろうか。
パラブーツのシャンボードは、ウエストンのゴルフはキャラが似ているようでかぶらない。シャンボードのほうがボリュームがあってゴツいよね。だから、カジュアルにかわいく履ける。ゴルフのほうがややドレス寄り。
でも、今回はローファーの紹介。「Adonis(アドニス)」を紹介させてもらいます。
「Adonis」はパラブーツらしからぬ?上品なローファー
パラブーツはやっぱり、ボリュームがあってゴツゴツしたゴム底が特長だと思っていた。しかし「Adonis(アドニス)」は、そのゴツさを抑えた印象のローファーだった。アイコンである深緑色のタグもついていないし、かなりシュッとしている。
革の質も、ほかのモデルと比較するとスムースな印象だ。きめが細かいフレンチカーフで、CHAMBOADと比較するとだいぶドレス寄り。でもなんとなく、タフな質感を湛えている、不思議なルックスのローファーなんだよね。かっこいいよ。
パラブーツっぽくない?と思いつつ、その「DNA」と言われるソールを見てみる。もちろんラバーソールなのだが、こんなソールのローファーは見たことなかった。
一見すると、リッジウェイなんだけど、実はリッジウェイじゃない。パラブーツのオリジナルで、「GALAXY SOLE」というソールらしい。なんでも「レザーソールのようなすっきりとした見た目」を意識したらしい。
なるほどたしかに、これはリッジウェイよりもレザーソールに近いかたちかもしれない。ヒールの部分のゴツゴツ感は、リッジウェイソールより控え目で上品な印象だ。
ウエストンのローファー(#180)のソールは、絶妙な厚さが魅力だと書いたけど、パラブーツのアドニスのソールのほうが少し分厚そうだ。それでいて、ウェスト部分、トゥとヒールのあいだの、ソールの返りの部分は薄く仕上げている(!)。
これはいいぞ! まさしく俺が求めていた仕様のソールじゃないか! シューズのボリュームは担保しつつ、履き心地に影響する返りのケアもできている。めっちゃいい感じじゃん。
では、実際に試着してみる。次のページでレポートする。前置きが長くてほんとに申し訳ありません。