J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)のローファー(#180)を買わなかった理由|男の新定番ローファー探訪 第2回

仕事でジャケパン、カジュアルなセットアップを着る人なら一足は欲しいローファー。なんせ、紐がないから楽だろうと。でも、紐がないから調節が効かないのでなかなかフィットするローファーには出合えない。探しているのは、表革でゴム底、コインローファーでカラーは黒。クラシカルなやつ(ノーズが長くないやつ)。そして絶対にはずせないのが履き心地。数回に分けて、銘品と呼ばれているであろう?ローファーの試し履きレポートをまとめていく。

第2回は、J.M. WESTON(ジェイエムウエストン) のシグニチャーローファー#180。クラシカルなコインローファー(ペニーローファー)の最高峰だね……。

第1回 三陽山長「弥五郎」の記事はこちら
第3回 Paraboot「Adonis」の記事はこちら
第4回 ALDEN「99267」の記事はこちら
第5回 HARROGATE「SHOREDITCH」の記事はこちら

J.M. WESTONのローファーはとにかく面(ツラ)がいい

憧れのローファーといえば、J.M. WESTON(ジェイエムウエストン) のシグニチャーローファー#180。しかし、この靴はなんと呼ばれてるのだろう? 「ウエストンのローファー」が一般的だろうか。「180」がモデル名か型番だと思うんだけど、あんまり呼ばれてない気がする。そのあたりは以下、表記が揺れると思うけど気にしないでもらえるとありがたいです。

ウエストンのローファーは10万円以上する。最近値上がりしたのか、税込みだと13万円くらいする(追記:2024年8月時点で税込15万円くらいに値上がりしてました)。まぁ気軽に買えないわけだ。でも欲しいと思わせる魅力にあふれている。それはやっぱり第一印象、見た目なんだよね。

ウェストンのローファー(#180)は、いろんな百貨店やセレクトショップで売ってる。ECサイトとかでもよく見るよね。それで、まず目を奪われる。俺の場合、それがどういう体験だったかというと。

「お、こういうのこういうの! いやらしくなくていいね。……高いなこれ」

って感じだった。いろんな意味でとんがってないローファーを探している人ほど、J.M. WESTONのローファー(#180)の魅力にやられる。変な特徴がない、というかもっとも完成されたデザインのローファーって感じがするのよ。どの角度から見ても、これぞコインローファーだろーって感じ。説明へただよな、すみません。

よく「無駄がない」「これ以上手の施しようがない」とか言われるウエストンのローファーだけど、その通りだと思ういっぽうで、サドルの切り込みなんかは個性的なカモメ型だったりする。このあたりの主張のバランスが絶妙だ。コバの張り出しも上品さと無骨さの中間を行く、男心をくすぐりつつも繊細さを感じる仕上がり。拝みモカっていうのも、個人的には好み。

少し注意してみると、デザインは施されている。最大公約数的なストライクゾーンを押さえてるように見えて少しずらしているのがニクい。つまり、おしゃれってことなんだよな。

そして、ルックスの肝になる革の質。これはもう、カーフレザーのなかでは最高峰なのは間違いないみたい。ボックスカーフ。アノネイ? エルメスと同じ?など、いろんな修飾語で説明されているみたいだけど、もし実際のところこれが最高峰じゃなかったとしても、実物を見れば誰でも好きになる質感というんでしょうか、安っぽさやいやらしさの一切ない、最適な素材を選んでると思わせる革だった。コードバンとかシボの入ったのがほしい人は別のを選ぶんだろうけど、カーフのスムースレザーで探している人はこれが最高の選択肢といえる革だと思う。

ちなみに、パテントカーフのローファーもある。こっちは革底しかないのかな?(今回紹介しているのは、パテントじゃないボックスカーフのラバーソールのローファーです)

万力締めとは? J.M. WESTONのローファーのサイズ感

ウエストンのローファーは、カツカツのサイズ感で購入して「万力締め」という修行を経ると、まるで自分の皮膚のようになじむとか言われている。でもこれって、どのローファーもたいていそうだろう、と思っていた。

でもローファー探しをしていると、案外最初からフィットする靴が見つかったりした。日本人向けのラスト(木型)とか、踵(かかと)の部分のヒールカップに丸みを持たせて踵がおさまるようにしてくれたりしている靴はけっこうある。

日本人って、踵が小さいらしい。だから、インポートの革靴なんかは踵が合わないなんてことがよくあるみたいだ。日本人向けに調整された木型っていうのは、よく「踵の小さな日本人に合わせてヒールカップを小ぶりに~」って説明がされてるけど、そういうとこらしい。

このヒールカップという観点でいうと、ウエストンのローファーはあんまり配慮していないんじゃないだろうか。ヒールカップはそんなに小ぶりか?って感じで、アーチは緩めである。日本人に合わせるってことはやってないんじゃないかな。パーソナライズのサービスでも、たしか木型の調整はできなかったんじゃなかった?かな。間違ってたら申し訳ない(その代わりではないけど、後述のワイズ展開の豊富さがあるのでは)。

そういう意味かわからんが、たしかに試着の際もカツカツのサイズを薦められた。じゃないと、踵がすっぽ抜けて歩くことなんてできない。5のDワイズか、6ハーフのCワイズ。たしかにキツかったし絶対に靴擦れが痛くてやばいだろうな、という履き心地だった。靴下が厚かったってのもあるけど「これで歩くのか?」という気持ちになった。でも、いつか修行を経て馴染むのが楽しみという気持ちもわかった。

ってか、Cワイズの既製靴を初めて履いたよ。そう、J.M. WESTONのローファーが高い理由のひとつは、ワイズの豊富さにある。普通の既製靴はワイズがひとつしかないことがほとんどで、その分、量産も躊躇なくできるだろうし在庫の管理とかもしやすいだろうからコスト面でメリットになってるだろう。ウエストンはたしか、C, D, Eとあるのかな? こっから選べるのはありがたいよね。つまり、選択肢が多いから、絶対試着したほうがいいって話なんだけど。

とにかく、購入するのに度胸を試される靴だと思った。文字通り血の滲む修行を経て履きこなせるか、そして10万円以上もする。よくある話だと思うけど、高いけど着心地の良い服より、安くて楽な服のほうが出番が多くなったりして、いつのまにか高い服のデザインがちょっと古くなって手放す、みたいな。そんな未来も見えたりして、ちょっと怖くなる。

次のページでは、ソールのディテールに注目。そして、タイトルで示した通り今回購入は見送ったんだけど、その理由を書かせてもらっています。よかったら続きを読んでみてください。長くてすみません。