洋服にお金をかけたくないが、ファッションに気を遣っているとは思われたい。自分のスタイルに自信を持ちたい。そんなとき、何にお金をかけるべきか考えてみた。いろんな買い物をしてきたが、一番自信につながったのがバッグ(鞄)と腕時計だった。その次は靴(スニーカー)だった(今回は靴の話はしないけど)。
一点豪華主義という考え方
ルイ・ヴィトンやセリーヌの鞄を持っている女性を見て、どう思う? OLから女子大生まで、高級ハンドバッグは憧れの的だけど、当人には不釣り合いで、みんな示し合わせたようにそこだけにお金をかけて、なんだかむなしさすら漂っていると、最近まで思っていた。
これを男性の場合に当てはめてみる。
街ゆく人を観察すると、高級ブランドの鞄を持ち歩いている男性は意外と少ない。ビジネスマンで言うと、よくわからないナイロンのブリーフケースだったりバックパック、ブランドのわかるものでいうとTUMI(トゥミ)やBRIEFING(ブリーフィング)を持っている。そして、「あぁTUMIね」という気持ちになる。TUMIは実際、丈夫で収納力もあり機能性抜群のバッグを作ってるけど、ファッションとしてはおもしろみに欠ける。
普段着の男性たちを見ると、バッグにこだわりのある人は少ないようだ。PORTER(ポーター)だったり、MYSTERYRANCH(ミステリーランチ)、Arc’teryx(アークテリクス)だったり。大学生もおっさんも、持っているものに大差ない。なぜ男の子はアウトドアっぽいバッグを買ってしまうのか……。20代の子とかは、トレンドの小さい形のバッグを持ってたりしたけれど、それも“今風にハマっている”という域を出ない。
かくいう俺も、普段はPORTERのデカいバックパックや、小さいカバンを使っている。コラボものでなかなか流通していないもの、かつサイズやディテールはそのブランドのなかで最高峰のものを(バックパックはマジででかい)使うことで、差別化できていると思っていたけど、ただの自己満足で、実際は他の人と同じようなカバンを使っているようにしか見えない。まぁ、つまらんよな。
それで、仕事着で使うバッグを30万円くらいするValextra(ヴァレクストラ)のブリーフケースにしてみた。12回ローンを組んだ……。まぁ一生使うと誓って買った。でも手はめっちゃ震えていた。
俺はでかいカバンが好きだから、でっかいのを買った。なんででかいカバンが好きかというと、小さいカバンってなんかケチケチしたように感じるんだよね。それが高級ブランドのものだとなおさらで、ブランドを装備するために、一番安いものを買ってる、みたいに見える気がするから。この考えからしてだいぶひねくれてるんだけど……。
高いバッグを使っていると、洋服にかけるお金は最小限でいい、サイズが合っていて清潔感が保てていればいいと思えるようになった。考えてみてほしい。アルマーニのジャケットを着ているのにバッグはBRIEFINGだったとして、そいつがアルマーニを着ていると思えるだろうか? そんな風には思えないよね?
逆に、すごい高そうなカバン(嫌味じゃない範囲で)を持っている人がいて、こぎれいなユニクロのジャケットを着ていたら「ジャケットも高いの着てるんだろうな」と思うよね? たぶん、一点豪華主義の効果ってそこにあるんじゃないだろうか。
女性の場合は、たぶん一点豪華主義をみんながやりすぎてて、もうトリックが見え透いてるから効果は高くないんだと思う。男性の場合は、まだそこが効くと思うんだよね。で、男性の装いへの意識はこれからの時代もなかなか上がらないと思うから、一点豪華主義の効果は持続すると思う。
腕時計にお金をかける意味
でも、バッグって仕事中も持ち歩くわけじゃないよね? 持ってないあいだは効果はないわけだ。じゃあ、常に身に着けているものといえば……腕時計と靴。
先に靴の話をする。おしゃれは足元からっていうけど、たしかに靴に目が行くことはある。常に身に着けているし、ある意味むきだし。「高そうな靴はいてるね~」とかいう会話はよく耳にするし、革靴だと革の質ってけっこうわかったりする。
でも、靴は傷むし、すり減る。ちゃんと手入れしている靴でも、さすがにおろしたてのような感じには見えなかったりして、高い靴を頑張って長く履いていると、意外とみすぼらしく見えることもある。「いい味だしますね」みたいな考え方もあるけど、やっぱりキレイな状態のほうがいい。
それじゃあ腕時計はどうなんだろう。腕時計って、袖に隠れて見えないよね。でも、ちらっと目に入ると気になる。なんかそんなふうに作られている気がするし、だからこそ秘めた美意識が垣間見られるような気がする。もちろん、靴ほどすぐに消耗しない。
バッグと同じで、いい腕時計をしていれば「洋服もいいものを着ているんじゃ……?」と思われるだろう。また一点豪華主義効果。でも、そんなに嫌味じゃない。だって、腕時計はたまにしか見えないから。そんくらいの感じでセンスをアピールしたいよね。
どんなバッグと腕時計を選ぶべき?
これは服装に対する哲学の問題なので、これという話はできないんだけど……。ひとつ、“高いもの”っていうのはやっぱりあると思うんだよね。「結局それか」と思われることを承知で書くと、高いものを買うにはやっぱり勇気がいるんだよね。その勇気を示すってことでも、高いものに一票って感じかな。
だいたい、高いものは革製品が多くて、品質の高い革を使っているだろうから、そこに高級感が出る。でも、クロコダイルみたいな露骨じゃないのがいいね。
ファクトリーブランドで「エルメスと同じ革を使っています」みたいなものもあるけど、そういうのは個人的にはピンとこない。やっぱりブランドって偉大で、デザインやディテールの妙、そしてもちろん認知度の観点で、それらしさを作り上げているんだよね。宗教じみているとも思うけど、イメージを長いあいだかけて世の中に刷り込んできてる。そのブランドを買って、そこに共感する人だという証明を買える、っていうところがブランドものの価値なんじゃないかと個人的に思う。
でも、これみよがしなものじゃいけないと思う。ブランドがわかりにくい、でもなぜか雰囲気がある、そういうものを選ぶのが俺の好みかしら。
あと、不思議といいデザインのものを見つけると値段が高いことって多いよね? ビビッときたものに限って高い、みたいな。店頭だとそういうふうにディスプレイしているから、そう感じちゃうだけなんかもしれないけど。そこで妥協をせずに買い物をするといいね。
靴(スニーカー)の話は、今度させてくれ。これもまたちょっとめんどくさくて長い話になりそうだからねー。
腕時計とバッグにこだわると「時短」のメリットも
最後に一個だけ。わりとどうでもいいところと思うかもしれないけど、腕時計とバッグをいいものにしておけば、コーディネートにかかる時間がけっこう短縮できたりする。腕時計とバッグがちゃんとしてるから、そのほかは無難でいいか、みたいな考え方なんだけど。
ところが、本当にそう思えてくるんだよね。で、意外と楽になった。いや、それこそ考え方おっさんくさくなると思われるかもしれないけど、事実なんだよね……。なので、ある意味デメリットかな? 服装のこだわりへの意識が少しなくなってくるってのは。
でも、肩の力が抜けてる人って、余裕があっていいもんよ……つまり、おっさんは肩の力が抜けてるってことかと言うと、またその辺も議論になりそうだけど。まぁ難しいね。いや、この話おもしろいね。ちょっと考えて、出直してまた別のブログにできるよう、意見をまとめてみますね。
こんな漫画もある。『服を着るならこんなふうに』。手に取るのになんか抵抗があったけど、こういうハウツーめいた漫画を抵抗なく読んで参考にすることはけっこう大事だったりする。読んでみたんだけど、お金をかけないおしゃれを実践しているだけではないってところがすごい勉強になります。メンズファッションに精通している方が監修しているようで、納得感のある内容です。もちろん漫画としてかなりおもしろいので、売れてるっぽいです。